皆さんこんにちは!!
獣医師のノスケです!
僕は獣医師として働く傍らで、獣医学部受験や獣医師についての情報などを普段発信しています。
最近ではYoutubeでも獣医学部受験のことを投稿するようになりました!
もしよろしければ併せて閲覧をよろしくお願いします!
そして僕は2022年の4月から夢であった世界一周にきています!
ということで今回はタイの獣医さんに1日密着してみたという内容になります!!
世の中の獣医さんの仕事がどのようなものなのか、それを知りたい人はとても多いと思います。
そして日本の獣医さんがどのような仕事をしているのか、
それを紹介している人はそれなりに存在しているので、僕は世界の獣医さんについて紹介することにします。
ということで今回の内容は、
・タイで働く獣医さんの1日
・タイの獣医事情
・タイの獣医さんにインタビュー!
です!!
海外の獣医さんの仕事に興味がある方、日本とどんな違いがあるのか知りたいという人は、是非この記事を読んでみてください!!
ではいきましょう!!
Contents
タイの獣医師の仕事と1日の流れ!
ちなみに今回1日密着に協力してくれたのが、Kanum(カナム)さんという方で、タイのカセサート大学を卒業しています。
ちなみにカセサート大学はタイで2番目に難関と言われる獣医大学で、とんでもなく優秀なんです!!
かつて1年間だけ僕がいた麻布大学に留学をしており、その時のつながりで今回は1日密着をさせてもらいました。


ちなみにカナムさんは、DLD(Department of Livestock Development)という国の組織に所属しており、日本でいう公務員のような立ち位置になります!
仕事前〜
まずは朝ご飯に連れてってもらいました!
その中でインタビューをしました。

1日密着とは言いましたが、実は今日は本来ならば休日とのこと。
しかし副業という形で、頼まれたらオペや診察をおこなっているそうです。
普段は臨床だけでなく、事務作業(いわゆるデスクワーク)をしたり、担当地区の様々な業務を行います。
例えば、家畜のワクチンのモニタリングをおこなったり、疾病のモニタリングを行います。
そしてそれは牛に限らず、鶏や豚、アヒル、時には農場にいる犬や猫の診察なども行います!
日本ならば基本的には動物種によって業務が分かれますよね。
犬や猫の獣医さん、牛の獣医さん、馬の獣医さん、豚の獣医さん、そして農場の疾病やワクチンのモニタリングも職種で分かれていたりするくらいです。
でもDLDという組織では、その地区の様々な業務を担当することになるため、このように動物種を超えて診療などを行います。
そんな話を聞きながら、朝ごはんを食べました。
(食べた後の写真しかなくてすみません…。でもめっちゃうまかったです!!)
そして手術現場まで車で向かいます。
途中でガソリンスタンドに寄ったのですが、こんな感じで野生のワンちゃんがたくさんいました。

野生のワンちゃんなんて書くと、なんだかのほほんとしてかわいい印象がありますが、実際は結構恐ろしいです笑
というのも、タイをはじめとするアジアでは野良犬が大量に存在し、特に地方に行くとその数が一気に増えます!
日本は野良犬を保護したり、時には殺処分するなどの政策が行われ、現在では野良犬を見かけることはほとんどありません。
でもそれはかなりレアな事例。基本的に外国には野良犬が溢れています。
そしてタイでは動物を殺してはいけないと法律で定められているので、基本的に殺処分などの積極的な政策はできません。
なのでこのように野良犬がたくさんいます。
なのでタイでは、人に危害を加えるような犬でも殺すことはできず、人々は色々な手段を使って追い出します。
都市部では大人しくて人懐っこい犬が可愛がられ、攻撃的な犬たちは追い出されて地方へと逃げていきます。
そういった背景があるので、特に地方では危ない(人を襲う)犬が多いんです。
またタイの犬は8割が狂犬病ウイルスを持っていると言われており、噛まれたりすると危険です。
狂犬病は発症すると100%死ぬのでとても怖い病気として認知されています。
でも実際は噛まれた後にワクチンをしっかり打てば発症することはありません。
また前もってワクチンを打っておけば、噛まれた後のワクチンの回数を減らすことができます。
なので死んだりすることはないのですが、
ワクチンのために旅行の日程がズレたり、気持ち的にも沈んだり、破傷風の恐れや怪我などの影響もあるので、噛まれないに越したことはありません。
なのでタイを始め、野犬がいる地域に行く人は、むやみに野良犬に近づかないこと、そして吠えられても背中を向けて逃げないことをお勧めします!
ちなみに僕はそれを全て破って、1日に10回追いかけられたことがあります笑

カナムさんが担当している地域まで、40キロほどあるらしく、仕事がある日はいつもそこまで運転しているそうです。
僕がNOSAIで働いていた頃は1日に150〜200キロくらい運転していたので、あまり驚きはしませんが、タイでの運転は日本とは一味違いました(笑)
とりあえずみんな信号をあまり守らないのと、スピードがめっちゃ速いので、僕は運転できる気がしませんでした。
そうこうしている間に現場に到着しました!!
仕事開始〜手術
さて目的の農場に到着です。



こんな感じでバッファロー以外にもたくさんの動物たちがいました。
タイでは1種類の動物をたくさん飼育するというよりは、色々な種類の動物を少しずつを飼育するのが主流なようです。


そしてこれがバッファローです!!
イメージより随分可愛い顔をしています。
しかも鳴き声が超可愛いんです!!
日本の牛の鳴き声は「モぉぉぉ!!」って感じだと思うんですけど、バッファローは「ニャオ!」って感じです笑
そして今回手術を行うのは、この大きなバッファローではなく、生後3ヶ月の子牛ちゃんです。

この子牛ちゃん何がよろしくないかというと、臍ヘルニアという病気になってしまっているのです。
臍ヘルニアとは、いわゆるデベソのことで、へその部分に本来はないはずの隙間ができて、そこから胃や腸が飛び出してきている病気なのです。

今回はその穴が大きいので、手術をすることにしました。

またバッファローは大きくてパワーも強いので、今回のオペは3人がかりで行います。
カナムさん以外の2人は同じオフィス内で働く同僚の方達です。
獣医師ではないですが、助手としては歴が長いので、しっかりとサポートをしてくれます。
用意する薬は、鎮静剤や鎮痛剤などの麻酔、手術時の感染防止のために抗生物質、術後の痛み止め、術部の消毒剤などです。

生後3ヶ月とはいえ、バッファローはかなり大きいので、かなりの人手を必要とします。
このようにご近所さん?も集まって、みんなでしっかりと押さえて、麻酔薬を注射していきます。



麻酔が効いてきたら、このように術部の毛刈りをして、洗浄します。
この時も暴れる可能性があるので、常に多くの人手を必要とするのです。
ちなみに僕も手伝わせてもらいました(笑)
数ヶ月前まで僕も現役の牛の獣医師だったので、なんとか戦力になれたと思います。

そしていざ手術が始まりました!
ここからは時間との戦いになります。
皮膚と筋層を切開して、飛び出している部分を整復します。
その後、空いている穴をしっかりと縫合します。
縫合の仕方などの細かい方式も、僕たちが普段やっていたスタイルと全く同じで、「ああ、獣医療は世界共通なんだな」って思いました。
手術は無事終了し、麻酔が切れてしっかりと立てるようになるまで見届けて、午前中の仕事はおしまいになります!!
午後〜
午後は乳牛の診療に向かいます!
これがタイの乳牛になります。
色が茶色で耳がめちゃくちゃ長いのが特徴です。
体は日本の牛よりは小さい印象ですね。


この日診察した牛は経過が長い牛で、数日前から診療を始めました。
最初は別な獣医さんんが診療をして、あまり良くならず、カナムさんのもとへとヘルプ要請が回ってきたのです。
それまでの抗生物質メインの診察を一度止めて、輸液と食欲を増進させる薬を組み合わせ、徐々に食欲が戻ってきたとのことです。
なのでこの日は治療はせず、一旦様子を見るということを畜種にお話ししています。
ほんとこの辺は日本と全く同じですね!!
その後はとあるヤギ農家さんに診療です!!

このヤギは先日出産をしたばかりで、実は難産になったそう。
その後の経過が心配でしたが、しっかりと乳を子供達にあげて、元気にしているよう。
一応外陰部の消毒を継続していました。
とは言えやはり動物は強いですね。牛なんかもそうなんですけど、分娩しながら餌食っているんですよ(笑)
その強さを僕たち獣医師はサポートしてあげている感じですね。
治療で治すというよりは、動物たちが自分たちで良くなっていく過程のサポートをするというのが、獣医師の実際のように感じます。

今回お邪魔したのが、タイの郊外にあたる場所なので、外国人がとても珍しい様子。
記念撮影を求められたので、農家さんとヤギちゃんとカナムさんと写真を撮りました!笑
まるで僕は山Pか何かになったような気分でした。
ということで、この日は合計で3件の農家さんの診療に随行させてもらいました。
普段はこういった診察のほかに、デスクワークや疾病、ワクチンのモニタリングもやっており、16時くらいまで働いているそう。
めっちゃホワイトじゃん!!!
と羨ましくなりました。
まあ今の僕は365日休み状態なんですけどね!!!
タイの獣医事情はどんな感じ?
これについてはまた別な記事で詳しく書こうと思っているので、ここでは簡単にご紹介することにします。
タイの獣医学部教育は?
そもそもタイには、全部で12校に獣医学部があるようです。
その中でも一番最初に設立されたのが、バンコクにある、Chulalongkorn University(チュラロンコン)大学です。
僕もチラッとみましたが、長でかくてめっちゃ綺麗!!
最初は大学と気づかないくらい立派な設備でした。
卒業までに必要な年数は日本と同じ6年間です。
実はここ最近まで国家試験がなかったそうで、今回密着取材したカナムさんも国家試験はなかったのだそう。
本当に最近になって国家試験の制度が導入されて、日本のスタイルと全く同じになりました。
獣医学部の難易度はどのくらい?
これに関しても日本と同じような感じのようです。
ですが微妙に違っていました。
一番難関とされるのが、医学部。これは日本と同じですね。
それについで獣医学部と歯学部があるようです。
そして難易度として薬学部が、その下にランクインするということです。
また獣医学部に合格できなかった人は、自然科学や動物系の他の学部に進んだりするようです。
これも日本と似たような感じです。
タイの獣医療の現状と制度とは?
タイでは、日本ほど動物への医療が整っているわけではありません。
大動物関連でいえば、日本のNOSAIのような制度はもちろんありません。
日本のNOSAI制度は、農家さんそれぞれが掛け金を払い保険に加入します。
そして家畜が病気になった場合には保険適用で医療が受けられ、家畜が死んでしまった場合には保険金が支払われるというシステムです。
でもタイにはそのシステムがないので、治療する場合は全額負担です。
また家畜が死んでしまった場合の保険金の支払いもありません。
ほかにも先ほど説明した狂犬病について。
日本と違って野良犬もたくさんいますし、狂犬病も清浄化されていません。
とはいえタイでは犬を殺処分することはできませんので、野良犬はどんどん増えていきます。
また野良犬たちにワクチンを打ちまくって正常化するのもあまり現実的とはいえません。
中には凶暴な犬もいるので、捕まえて打つというのはとても大変だからです。
なので狂犬病がなくなるというのはあまり現実的な未来ではないようです。
また獣医師免許がない人でも時として獣医師のように振る舞う必要があるとのこと。
日本のように国家資格が必須というわけではない?ようで、カナムさんのような獣医師免許をちゃんと持った人が常に診察をするということでもないようです。
僕もここに関しては詳しくは聞いていないのですが、カナムさんは「pretend(〜の振りをする)」という単語を使っていました。
つまり獣医師のふりをしなくてはならないという時も場合によってはあるそうです。
例えば今回手術をした人たち、カナムさんを含めて3人いましたが、獣医免許を持っているのはカナムさん1人です。
ですが手術時はちゃんと獣医師のように振る舞う必要があり、その辺が大変だとおっしゃっていました。
とはいえ都心部にはしっかりと動物病院もありますし、ペットとして動物を飼っている人もいます。
なのでこれからタイがさらに発展していけば、より獣医療も向上し、より獣医師の存在が社会にとって重要になっていくと思います!!
最後に!タイの獣医さんに突撃インタビュー!!
Q:「どうして獣医さんを目指したんですか?」
カナムさん:「最初志したのは、小さい頃。犬を2匹飼っていたの。その子たちが大好きでそれがきっかけで獣医さんを目指したの。」
「そして高校生になったときに人間の医者と比べてみて、動物のお医者さんの方がフランクに仕事ができるなって。人間相手だと神経を使うから。それが大きな理由かな!」
Q:「この大動物の道を選んだ理由はなんですか?」
カナムさん:「まだ若くてパワーがあるうちに大きな動物相手に仕事したいなって思っていたの。あとは農場に行って農家さんと話す方がリラックスできるし楽しいし、何より自然に話せるのがいいなって思ったから!」
「最初はこの仕事2年くらいで辞めるつもりだったんだけど、気づけば7年も8年もやっているの!それくらい魅力的な仕事ってことね!」
「あとは現場で働くのが好きなの!つまり臨床現場ってことね。デスクワークよりも動物相手、飼い主さん相手に仕事する方がイキイキと仕事ができるの。」
Q:「獣医さんになる人にとって必要なことってありますか?」
カナムさん:「まずは試験に受かることね!笑 やっぱり獣医さんになるためには高い点数を取らなくちゃならないわけだから、まずは試験に受かることが大事ね!」
「そして次に大切なのが、獣医さんの仕事をしっかりと知ること。1週間、1日でもいいから現場を見ることが大切!そして獣医さんの仕事がどんなものなのか、そして自分がそれに対してどう思うか。この仕事素敵!!って思えるなら、受験したらいいと思うの。」
このほかにも色々と聞いてきましたが、そのほかに関してはタイの獣医療の記事で詳しく解説していこうと思うので、楽しみにしててくださいね!!
最後に
ということで今回はタイの獣医さんであるカナムさんに密着取材をかましてきました。
予想以上に大変な1日を過ごしており、カナムさんの存在がいかに重要かがわかる1日となりました。
獣医さんの存在はタイでは日本以上に貴重で、その仕事の幅広さや重要性がわかりました。
ちなみにこの日はカナムさんにとって休日に相当する日で、副業という立ち位置で仕事をしていました。
この副業というのも日本とは違うスタイルですよね!!
日本なら副業で治療や診察をする獣医さんはほとんどいませんよね。特に牛の獣医なら公務員なのでできないことが多いです。
そういった面でも面白いことが色々と知れた1日でした。
これからもどんどんこういった世界の獣医さんに迫っていくつもりなので、ぜひYoutubeやブログをチェックしてみてください!!
よろしくお願いします!!
では!!