皆さんこんばんは!
最北端獣医師のノスケです!
僕は2020年に麻布大学の獣医学科を卒業し、現在は日本最北端の地で牛の獣医師をやっています。
そんな僕も7年前は獣医学科を目指す受験生でした。
もうその時の記憶は色あせてしまったような気がしますが…(笑)
ところで先日、獣医師を目指しているという方から、このような質問をいただきました。
「獣医学科では動物を使った実験は行っていますか?動物が好きなので傷つけるようなことはあまりしたくありません。」
という内容のモノでした。僕自身そのことについてあまり疑問を抱くことなく入学し、そして大学生活、社会人と歩んできました。
ですがこのような質問をいただき、改めて動物を使って勉強してきたということ、時には動物の命を奪って学びを行ってきたということを再認識しました。
そして獣医師である僕が、事実をしっかりと発信することで、ネットに出回っているデマや憶測によって、獣医学科に対する間違った見方が生まれないようにしたいと思いました。
獣医師を目指す多くの人が、この記事を読んで自分なりの考え方をもって、そして改めて獣医師を志してくれることを祈っています!!
なので、今回はこの質問に真摯にお答えしていこうと思います。
今回の記事の内容!
・獣医学科で実際に行われている動物を使った実習
・現在の実習のスタイルと考え方
・獣医学科に入る際に覚悟しておいてほしいこと
こういったことについて語っていこうと思います!
ではいってみましょう!
Contents
獣医学科では動物実験や動物を使った実習は行うのか?
結論から言うと、獣医学科では現在でも動物を使った実験や、実習は行われています。
そしてその動物種は多岐にわたり、犬や猫などもつかいますし、マウスやラット、ウサギのようなげっ歯類、牛や馬、豚、鶏などの家畜も使用します。
主に実験や実習で動物を扱う科目は、薬理学や生理学などの基礎学問や、外科や内科、放射線学といった実践的な科目であったりと様々です。
学年が上がるにつれて、実践的な学問も増えてくるため、どうしても本物の動物を使った実習が必要不可欠となってくるのです。
現在に獣医学科の教育では、動物実験は不可欠であると言えます。
どのような用い方をするの?
とはいえ、全部の実習において、動物を殺したりするわけではありません。
例えば、エコーやレントゲン撮影の実習では、犬や猫、牛や馬を用いますが、その実習が終われば、そのまま飼育し続けます。
マウスやラット、ウサギなども内容によっては実験後も普通に飼育します。
牛や馬などの実習でも、基本的に実習後も飼育され続けることがほとんどです。
とはいえその反面、最終的に安楽死という形で終える実習もあります。
外科実習において、去勢や開腹手術、麻酔学などの実習後は、最終的に安楽殺させますし、薬理学の授業でも、薬物動態を調べた後のウサギは安楽殺させます。
また解剖実習では、犬や牛や馬などの検体は、当然ですが実習のために殺されて、授業で使われます。
必ずしも安楽殺させたりするわけではないのですが、実習の中身次第では安楽殺させたりすることもあるのです。
現在の実習のスタイルと考え方
とはいえ時代はどんどん進み、現在ではいかにして動物に苦痛を与えないかという考え方が主流になっています。
その考え方の代表として”3Rs”というものがあります。
Reduce(動物の苦痛を減らす)
Replacement(生体ではなく、代替となるものの利用)
Refinement(実験動物の環境の向上)
です。
まずReduceは、動物の苦痛を減らすために、実験を行う際に麻酔をしっかりおこなったり、仮に最終的に安楽死させるとしても、苦痛を伴わないようにするという考え方です。
そしてReplacementは、例えば模型を用いたり、タブレット端末などを利用することで、実験動物の使用数を減らそうという考え方です。
そしてRefinementは、飼育環境の向上により、実験動物がより快適に過ごせるようにしてあげようという考え方です。
これら3つの考え方をまとめて、3Rといいます。
これらの理念は、大学では深く浸透しており、そして実践されています。
なるべく動物の使用数は減らされていますし、麻酔や苦痛緩和も徹底されています。そのために別の授業を行うくらいです。
そして、学生自身が世話をしてあげることで、動物の環境がとても快適なものになっています。
なので、現在の日本における獣医学では、実験動物はなるべく使用数を減らし、そして苦痛を軽減し、そして環境を快適にしてあげるということが前提になっています。
あくまで、動物実験は必要最低限で行うというのがスタンダードな考え方なのです。
大学では、動物実験に関する授業も行われている!
そして、大学では実験動物学という学問も存在し、動物実験に関する様々なことを学びます。
実験動物の種類、どのような歴史があるのか、実験動物はどのように扱われるべきであるのか、さきほどの説明のような3Rsの理念もここで学びます。
なので、獣医学科の学生は全員、動物実験についての様々な知識を持っていますし、そして実験動物を尊重し、大切に行うことが出来ます。
決して、無益に動物実験を行ったり、苦しめたりしていることはないのです。
本当に必要な場合のみ、生体を用いて実習や実験を行いますし、その時に動物に苦痛を与えないようにするための教育も受けています。
模型などで代替できる場合はそちらを用いています。
また1年に1回、実験などで犠牲となった動物に対する慰霊祭が行われており、学生や教授などが動物を追悼しています。
獣医学科を目指す人に考えておいてほしいこと
さきほど、獣医学科では動物実験は必要最低限しか行わず、そして行う際にも最大限の配慮をしているという話をしました。
それでも、結局は僕たちの勉強のために、少なからず動物は犠牲になっています。
薬物の動態を調べる実習では、最終的に安楽殺しますし、外科実習でも手術の実習に使った犬は安楽殺させます。
また解剖実習では、犬は薬液漬けになって班に1匹ずつ渡されますし、馬や牛の解剖実習においても同様です。
そしてそれを実際に解剖していきます。
そして安楽殺も学生が自分たちで行います。最後まで責任をもって学生が行います。
さらに言えば、僕は現在牛の獣医師をやっていますが、治療の見込みがない牛は、僕自身で安楽殺させます。
獣医師になる以上は、動物を治すことはもちろんなのですが、殺すことも避けては通れないのです。
獣医師を志す人は、心優しい人が多く、中にはそういったことがどうしても出来ないために、大学に入ってからリタイアしていく人も存在します。
それに関しては僕がどうこう言えることではないのです。
それでも、もしあなたが現在獣医師を志しているのであれば、この動物実験に関しては良く考えていてほしいのです。
割り切ったうえで入学していた僕でさえ、1年生のころに行った実習で安楽殺を最終的に行った時にはショッキングでした。
しばらく無言になるくらいには。
そしてその行為に少しずつ慣れてきて、悲しいことですが徐々に何も思わなくなってきてしまいます。それもまた現実です。
確かに大学で実験動物についての授業は時間をかけて行いますが、それでも自分自身の考えを入学前に持っておいてほしいのです。
・獣医師になる以上は動物実験は避けては通れないこと。
・そしてそのために犠牲になる動物はいるということ。
・ただし、動物実験に関する授業は手厚く、そして動物に権利や命はしっかり尊重されており、苦痛を取り除くように全力を尽くしていること。
・動物実験は必要最低限で行っており、その時は皆が真剣に取り組んでいること。
これらを多くの人に知ってもらいたいと思い、この記事を書きました。ネットでは様々な情報が行き交っていますが、これが紛れもない真実です。
このことをしっかりと理解し、そして自分なりの考えを持ってから獣医学科に入ってきてくれることを願っています。
では!